【森山大道 版画展】
-タカ・イシイギャラリー 石井孝之氏インタビュー「森山大道の魅力」-(4/11火)

2017年5月、銀座三越 7Fギャラリーにて当店としては初の試みとなる「アートフォト」の提案を行う。
記念すべき第1回目は、日本を代表するフォトグラファー・森山大道。
今回は、彼のバイオグラフィのなかでも特筆した試みである「版画」にフォーカスした個展を開催する。

今回の個展をキュレーションして頂いたタカイシイギャラリー代表・石井孝之氏に、森山大道の魅力・今回の見どころ等を語って頂いた。

-森山大道の魅力とは

「森山さんの作品はよく『アレ・ブレ・ボケ』と称されます。荒れた粒子、焦点がブレた不鮮明な画面、ノーファインダー※1による傾いた構図を特徴としたこの作風は森山さんに限ったものでは無く、同時代の写真家たちに共通するものでした。彼の表現に対する厳しい非難の声もありましたが、同時代の写真家のなかでも特に彼がフォーカスされ、皆が騒ぎ、嫉妬したのは、彼の作品に『黙殺出来ない何か』があるからだった、と言えます。」

「彼の作品は基本的にスナップ写真です。撮影しているところを同行した事がありましたが本当に簡単に、一瞬で撮るのです。しかもノーファインダーにも関わらず、フレーミング(構図)が決まっているのです。彼には天性の感覚的・直感的なものがありますね。街を一緒に歩いていると、トランス状態か、という気配すら感じます。」

「スナップ写真は誰でも撮れますが、本当に膨大な枚数の撮影を行っている、という点が彼と我々の決定的な違いです。
例えば「Daido Hysteric」という200ページの写真集に対し、実に2万枚のスナップを撮り、そのなかから掲載イメージを選び抜いています。我々のいうスナップとは向き合い方が異なっているのです。

90年代に使用していた、オリンパス社製の「μ(ミュー)」というコンパクトカメラをシャッターがおりなくなるまで撮り続け、3台も使い潰したそうです。森山さんがいかに膨大な写真を撮っているかを物語るエピソードです。」

-森山氏と版画との関係は?

「実は、森山さんは銀塩プリントよりも『印刷物』をより好んでいます。彼はグラフィック・デザインに造詣が深く、初期は商業デザイナーとして活動していました。その際に、東松照明※2 や、特にアンディ・ウォーホル※3の画集に強く影響をうけました。ちょうどアンディの全盛期が同世代なので、かなり若い段階でシルクスクリーンに強い関心がありました。」

「1974年(当時36歳)には『プリンティングショー』、『ハーレー・ダビットソン』というシルクスクリーンの個展を開催しています。
『プリンティングショー』は、多分にパフォーマンス的要素が強いものでした。
会場にはシルクスクリーンで刷った作品が点在し、それを観客が自ら何点か選び、座っている森山さんのところに行く。
そこで森山さんが、その場で表紙をシルクスクリーンで刷り、画集としてバインディングして渡す、というものでした。
同年の『ハーレー・ダビットソン』は、訪れた寺山修司氏をして「ガソリンの匂いがする」と評される程、荒々しく質感的な個展でした。」

「森山さんの作品では網タイツのイメージが用いられる事が多いですが、『網』というイメージに対して彼独自の拘りがあります。
撮影も電線の交錯や金網越しに撮っている作品が多く、シルクスクリーンも言わば『網点』を通じて刷る技術なので、実は彼の作風と技法の嗜好性が繋がっている、と言えるでしょう。

銀塩プリントも『粒子』によって図像を構成するという点において、シルクスクリーンの『網点』と繋がりがあるのです。」

-今回の銀座三越での個展の見どころは?

「今回は、いわゆる初期の「アレ・ブレ・ボケ」のモノクロームな作品からカラーのグラフィカルなものまで一同に揃い、非常に見応えある展示だと思います。美術に造詣が深い方から、若い感性の方まで、幅広く楽しんで頂ければ幸いです。」


タカ・イシイギャラリー 代表 石井孝之氏。今回のインタビューを快く応じて下さいました。

※1ノーファインダー …写真用語。ファインダーを覗かないで撮影する事。被写体となる相手にカメラを意識させない自然な表情がとれる、等の利点がある。
※2東松照明(1930-2012)…戦後日本を代表する写真家。1995年 紫綬褒章受章。
※3アンディ・ウォーホル(1928-1987)…20世紀を代表する版画家・藝術家・ポップアートの旗手。文化思想全般で世界に大きな影響を与えた。


<展覧会情報>
森山大道 版画展

会期:5月17日(水)~5月23日(火) *最終日は午後6時閉場
会場:銀座三越7階 ギャラリー

三越伊勢丹 TOKYO ART LOUNGEでは、個展開催に先駆けて、出品予定の新作をご紹介いたします。(ご予約にてお承り致します。作品のお渡しは展覧会終了後となります。)
また、当サイトでご予約いただきましても、店頭で売約済みとなっている場合もございますので、予めご了承ください。


森山大道 Daido Moriyama

1938年生まれ。アレ・ブレ・ボケと呼ばれる荒れた粒子、焦点がブレた不鮮明な画面、ノーファインダーによる傾いた構図を特徴とした、既存の写真制度を覆すラディカルな表現で写真界を震撼させた。テート・モダン(ロンドン、2012年)、カルティエ現代美術財団(パリ、2003年)、サンフランシスコ近代美術館(1999年)他で展覧会を開催。