京都栂尾 高山寺×マイセン

PHOTOGRAPHS_Kunihiro Fukumori TEXT_Rica Ogura  ?お帳場通信2013春号より抜粋?

世界遺産の京都 栂尾高山寺の名宝、鳥獣人物戯画とヨーロッパで先駆けて硬質磁器を生み出したマイセンが、世紀の出会いを果たしました。

愛らしく擬人化された動物たちに、笑みを誘われる高山寺に伝わる国宝の絵巻物、鳥獣人物戯画。生き生きと躍動的な表現手法は、日本のアニメーションや漫画の原点とも言われています。甲乙丙丁の四巻からなり、とくに甲巻は兎、猿、蛙をはじめ十一種類の動物たちが追いかけっこや弓遊び、水遊びなどを行う場面が描かれたもので、人気が高いものです。
その甲巻から、「猿追い」と「相撲」の二つのよく知られる図がプラーク(陶板)となって誕生しました。手がけたのは、ドイツの名窯、マイセン。ザクセン選帝侯にしてポーランド国王でもあったアウグスト強王のもと、18 世紀初頭にヨーロッパで初めて、当時憧憬の的だった東洋の白磁に匹敵する硬質磁器の製作に成功したのが、マイセンの始まりです。日本の遺産に新たな息吹を与えるコラボレーションに、これ以上ふさわしいパートナーはなかったと言えるのではないでしょうか。

現在、高山寺の石水院にある鳥獣人物戯画は写しです。オリジナルは東京国立博物館と京都国立博物館に所蔵されています。写真は、甲巻の相撲の場面

マイセンの中でも、プラークの絵付けを担当したのは、マイスターと呼ばれる熟練の職人です。そんな彼らにして、鳥獣人物戯画の筆使いは再現が不可能なほど高い技術を誇るものだと言います。職人たちは、ドイツに届けられた模写を前に、練習を重ねて完成させたそうです。
意外なことに、高山寺の鳥獣人物戯画と海外とのコラボレーションは初めてのこと。時代を超えた東西文化の邂逅が昇華された芸術は、胸を打たずにはいられないはずです。

明恵上人の英知を受け継ぐ古刹へ、鳥獣人物戯画の謎を訪ねて。

なぜ、高山寺に鳥獣人物戯画が残されていたのか? 多くの人が知りたいところでしょう。しかし、文書が残されているわけではなく、真実は謎のまま。描かれた目的もはっきりしていないのです。作風も一貫性がなく、一連の物語として読み解くのは困難なため、複数のスケッチがつなぎ合わされ、絵巻物に仕立てられたというのが、真相に近いようです。
四巻のうち、甲乙巻は十二世紀後半、丙巻は十二〜十三世紀、丁巻は十三世紀の製作とされ、少なくとも甲乙巻は、建永元年に明恵上人によって高山寺が開かれる以前に作られたものになります。それが、高山寺に伝わるようになったのは、ほかでもない明恵上人の功績によるところが大きかったようです。藤原定家の著作や『徒然草』にも登場し、当時、上人は高僧として名を馳せていたことがわかります。だからこそ、寺は多くの書物を所蔵し、画家や彫刻家をはじめ、文化人が集う場所になったのです。いわば、鳥獣人物戯画が高山寺に収められることになったのも、必然と言えるでしょう。
「鳥獣人物戯画を通じて、明恵上人のことを少しでも知ってもらえると嬉しいですね」と、執事の田村裕行さん。明恵上人の精神は、後世にも受け継がれ、高山寺は、ノーベル賞作家、川端康成や小林秀雄、白洲正子といった偉大な文人に愛されてきたことも忘れてはなりません。

石水院の中に鳥獣人物戯画の写しが展示されています。

鳥獣人物戯画の筆使いに感動したマイセンのマイスターたち。練習に練習を重ねて、九百年前の絵師の技に挑みました。

マイセンの鳥獣人物戯画はこちらでご購入いただけます。

マイセンのマイスターが手描きで仕上げたプラーク(陶板)。高山寺の鳥獣人物戯画の中でも人気のある猿追いと相撲の場面が選ばれています。陶板の美しさを引き立てるために、それぞれ額装にもこだわりました。写真には写っていませんが、白いプラークは、重要無形文化財の木工芸の保持者である中川清司氏、黒いプラークは、千家十職袋師の土田友湖氏の裂地にての額装に収められて届けられます。
〈マイセン〉
高山寺 鳥獣人物戯画 プラーク 白
プラークサイズ:縦30×横43cm
詳細・ご購入はこちら
〈マイセン〉
高山寺 鳥獣人物戯画 プラーク黒
プラークサイズ:縦30×横43cm
詳細・ご購入はこちら




アクアティンタ(銅版転写技法)様式で作られた、より身近に高山寺の鳥獣人物戯画とのコラボレーションを楽しめる食器も展開。

<マイセン>
長角皿絵変り 5枚組
プラークサイズ:縦13cm × 横23cm × 高さ3cm


<マイセン>
茶器絵変り 5客組 160ml

若冲×マイセン

マイセンと日本のコラボレーションは、もう一つ存在します。異能の画家と呼ばれる、江戸時代に活躍した伊藤若冲の版画作品をモダンなカップ&ソーサーに仕上げたものです。京都・聖護院にある版画文庫、京都版画館が所蔵する日本に二冊しか存在しない『素絢帖』から選ばれた植物や昆虫の図柄が配されています。
「若冲の版画は、拓版摺りと呼ばれる技法が使われていますが、世界の版画の歴史の中でも非常に珍しい技法です」。京都版画館の徳力みちたかさんは、そう教えてくれました。また、黒の独特の色合いが魅力で、この黒を見るために足を運ぶ研究者も多いとか。極彩色の動植綵絵とは違った美しさで魅了する、若冲の表現は今なお新鮮に映ります。

京都版画館が所蔵する、伊藤若冲の版画本『素絢帖』と絵巻物『乗興舟』。モダンな感覚と漆黒の美しさにため息が出ます。

伊藤若冲の版画本『素絢帖』が基になった食器は、日々の暮らしを豊かにしてくれます。アクアティンタ(銅版転写技法)様式。

<マイセン>
カップ&ソーサー 絵変り5客 カップ 200ml

<マイセン>
プレート 絵変り5枚組 径約19cm