好きなものに囲まれていたいから。
ゴルフクラブを「飾る」ためのスタンドを形に。
株式会社BRANCO

「居心地の良い部屋とは、好きなものたちに囲まれている空間のこと」 —— 貴重なクラシッククラブをはじめ、組み上げた自転車や趣味の品々を並べた自宅内の工房でそう語ってくれたのは、BRANCO代表の宇野英隆さん。もともとは愛用クラブを保管するために、あれこれと試行錯誤の末に自作したというクラブスタンドは、まさにそうした自身の想いから生まれたものでした。

「ゴルフの楽しさはプレーするだけではありません。家にいるときも、クラブを眺めたり、手に取ってみたりという楽しさもあるはずです。愛用のクラブを眺めながら愉快なラウンドの思い出に浸る —— そんな悦びを形にするためには、それ自体がインテリアになるような上質なクラブスタンドが欲しい。そんな想いが、いつしかむくむくと頭をもたげてきたのです」

宇野さんはそのとき35歳。それまで身を置いてきた商業空間開発/不動産ディベロッパー関連の仕事に区切りを付けて、もっとQOLを体現するような新しいライフステージにシフトしたいと考えていた頃でした。「子供の頃からもの作りが好きでしたし、やり始めると凝り性なところもありまして。あるとき、とうとう自分用に作ってみたら、『あれ、こんなインテリアになるようなクラブスタンドは世の中にまだないはず』と気づき、妻や仲間たちからも賛同を得て、独立起業を決めることになったのです」

社名はBRANCO。大好きな素材であるBRASS(真鍮)と、and COMPANY(仲間)を組み合わせた造語です。昔から使われ続ける真鍮製品のような温かみのあるものを、日本でもの作りを行う職人の仲間たちと一緒に提供していきたい—— そんな想いから名付けられました。

脱サラから生産者への転身ゆえに、最初はすべて手探り状態。ゴルフが趣味だったとはいえ、業界には何の縁故もありませんでした。「それまでの仕事を辞めてまでの取り組みですから、品質に関しては一切の妥協を許さない覚悟でした。当初からのこだわりは、日本製ということ。職人に会いに行き、納得するまで話し合いました。日本製の妥協ないもの作りを叶えるには、必要不可欠な条件でした。それに、微力ながらも日本のもの作りを支えたいという思いもありましたね」

宇野さんは木のパーツ、真鍮のパーツ、シリコンのパーツなど、それぞれの分野で腕利きと言われる職人を探し出しては実際に会いに行き、思いの丈を伝えました。断られることもありましたが、苦労の末にとうとうサンプルを完成させます。撮った写真を真っ先に持ち込んだ先は、2014年のゴルフフェア。雑誌社のブースを周り、飛び込み営業をかけました。そうした中、会場にいた藤田寛之プロに思い切って声をかけてみたところ、「こんなクラブスタンドは見たことがないね。ちょっと使ってみようか?」と言ってもらいます。第1号のユーザーが憧れの藤田寛之プロになろうとは、思いもよらない幸運だったと宇野さんは笑います。

その後、大々的な宣伝活動はできないながらも、地道な営業活動や口コミの効果もあり、次第に注文が舞い込むように。ゴルフを愛する富裕層や著名人たちを中心に、知名度を徐々に上げていきます。
1商品からスタートしたクラブスタンドも、需要に合わせて次第にサイズや形状のバリエーションを増やしていきます。一つひとつ手作りゆえに価格は高くなってしまうものの、素材の選定から加工、仕上げに至るまで、すべてのこだわりは工芸品の域に達する美しさに昇華されています。特に本体に使われるウォルナットの無垢材、そして鈍い輝きを見せる真鍮製シャフトホルダーは、時間のかかる手作業によって丁寧に研磨され、まるで楽器を想わせるような優美さをまといます。
見て美しいだけでなく、触り心地においても上質を感じさせる仕上げは、きっとオーナーに所有する喜びを与えてくれるはずです。

さらに、使ってみて分かるのは、実用品としての秀逸さ。
室内でクラブを出し入れしやすいように、上に引き抜く代わりにすっと手前に抜き差しできるフロントスロットスタイルは、宇野さんが改善に改善を重ねて形にしました。
付属の真鍮製シャフトホルダーは、ウォルナットフレームのレール部分に差し込み、ひねり部分を90度回転させることで、好きな位置に固定できる優れもの。アルファベットの「C」と「S」を組み合わせたような、見た目にも優雅な形状は、最小限のスペースにおける最大限のクラブ収納性を追求することから生まれました。
またクラブのヘッドを360度、自由自在に固定できるため、ヘッド同士がぶつかることによる破損も防げます。

製品を前に、「クラブをディスプレイしながら収納するという機能を超えたところで、これからもゴルフをカルチャーとして楽しむ方に届けていきたい」と嬉しそうな表情で語る宇野さん。
「僕自身、毎日のように仕事部屋に置いてあるこのクラブスタンドを眺めているだけで幸せを感じます。自分だけの空間で、自分だけの時間を過ごせる喜び。一生懸命に仕事をするONの時間から、好きなものを愛でるための豊かなOFFの時間に切り替えるときに、このクラブスタンドを傍らに置いていて欲しいですね」

文・大野重和